2006年10月18日

無断リンク禁止禁止の歴史

 「無断リンク禁止」という主張が非常識なものだとされるようになったのは、いつのことからなのでしょうか。

 無断リンクについて大事なことを総括
 この記事を読みまして、
かつては「リンクしてもいいですか」や「相互リンクしましょう」が文化だったこともあるという文化も一部では盛んであった。
 という一文が気になりました。

 そう、私がネットの閲覧をはじめた2000年の時点では、サイトに「リンクフリー」「無断リンク禁止」などの主張を載せるのは別に非常識なことではなかった、と思うのです。むしろリンクページにこれらの文言を入れるのがひとつの常識であったような気さえするのです。
 では、いつからそれらの常識は非常識なものになってしまったのでしょうか。

 ネットマナーについて言及したサイトの変遷を見てみました。

 ネチケットホームページWWWのリンクについて
 1996年に作成されたページです。ここでは
[質問]自分のWEB PAGEに他人のWEB PAGEへのリンクを設けたいのですが、事前に許可を得なければならないでしょうか?

[事実]Webのリンクについては、必ず承諾を求めるべきだという厳格な立場をとる人から、Webで提供される情報は本来フリーなものでリンクして欲しくない情報はWebに載せなければよいという立場をとる人まで様々な意見があってコンセンサス(合意)がありません。
 と、様々な異論があるため一概にどうするべきは言えないと断った上で、
「少なくとも礼儀として承諾を得ることは大事、ただしいちいち承諾を求めるメールを受け取るのを迷惑だと思うWEBMASTERもいるから「いついつからリンクを掲載したいと思いますが問題があるならご連絡ください。問題がなければ○月○日からリンクさせていただきます」というメールを送ることにしてはどうか」
「エチケットとしてそのページのWebmasterにURLを使用している旨を連絡するようにしているとのこと。連絡を受けたWebmasterはたいていそのページが広報の機会を得たことを知って喜ぶようです」
 というような助言をしています。
 また、最下段には
このページへのリンクを許可します。引用・転載の場合はその旨ご連絡ください。
 という断りがあり、書き手の中に「リンクは許可を必要とするものである」という前提があることがわかります。
 リンク元サイトの注意書き、ネチケット情報(ネチケットホームページ)編者からのお知らせにも
ネチケット情報(ネチケットホームページ)にリンクを張るのは自由に行ってかまいません。ただし、以下の2つの事項を要請いたしますのでご留意ください。
(1) リンクするURLは http://www.cgh.ed.jp/netiquette/ としてください。
(2) なるべく、リンク先のページのURLを電子メールでご連絡ください。
 と、ディープリンクはお断りの旨記されています。
 1996年時点このサイトに於いて、連絡無しでリンクを張る行為は
「色々な意見があるので絶対駄目だとは言い切れないけれど、エチケットとしては避けるべき」こととして定義されているようです。

 インターネットを利用する方のためのルール&マナー集 出典:財団法人インターネット協会(平成11年3月15日電子ネットワーク協議会作成)
 1999年に作成されたこのページには
6.16 リンクの取り扱い☆
 (前略)リンク先のホームページにリンクの可否に関する記述があれば、それを尊重しなければなりません。

 他人のページにリンクをはりたい場合、また逆にリンクをはってもらいたい場合には、こちらのURL、責任者の名前、リンク開始日などを相手に知らせるようにしましょう。
 とあります。
 「無断リンク禁止」とあるサイトならそれを尊重しなければならないし、リンクを張る際は無断ではなく一報を入れるのがルールでマナーである、ということですね。

 ホームページ安全講座 第5回:引用とリンクのしかた
 ここも1999年、9月作成のページです。
 
 リンクについてですが、無断リンクの是非については色々な意見があります。ひとつ言えるのは、無断でリンクを行なうと、トラブルになる可能性もあります。相手のページの中に、「リンクフリー」や「無断リンク禁止」など、リンクに関することが載っている場合がありますので、書いてある場合はそれに従いましょう。リンクに関しては、トップページの一番下や、リンクのページ、「このページについて」などのページに書かれていることが多いようです。
 何も書いてない場合は、事前にメールで問い合せをした方が確実でしょう。
 主張としてはほとんどはじめに挙げたサイトと変わりません。ただ、この時期には「リンクフリー」や「無断リンク禁止」を掲げるサイトがそれなりに存在していたことがわかります。
 この時期には、リンクされる側がリンクの可否を決め、主張をするのは別段珍しいことともおかしなこととも思われていなかったのでしょう。

 これは2002年に行われた調査の結果。
 デイリーリサーチ:リンク連絡は基本的なマナー?HP運営者の約9割が「連絡欲しい」
他人のホームページをリンクする場合、相手方に連絡していると答えたユーザーはあわせて6割。

その内訳は「大抵の場合連絡をしている」とするユーザーが38%、「場合によっては連絡することもある」とするユーザーが22%となっている。一方、「リンクを張ることを連絡していない」とするユーザーは5%だった。
(中略)
 逆に、自分のホームページが他のサイトにリンクされるとした場合、リンクを張ること(張ったこと)を連絡して欲しいとしたユーザーは約9割に達している。
(中略)
 無断でリンクを張ること(別枠で開く必要あり)自体は著作権侵害には当たらないため、相手にリンクの許諾確認をしたり、連絡をする必要はないのだが、個人間でのやり取りの場合、連絡をすることで人間関係が広がるといったこともあるため、多くのユーザーは基本的なマナーや礼儀として連絡した方が良い、連絡して欲しいと考えているようだ。

 リンクを張る際に連絡をしていない、必ずしも連絡をしないユーザーもいるけれど、それはあまりマナーに適ったことではないと受け止められている様子が窺えます。

 では、「無断リンク禁止という主張は合理的でなく、マナー違反である」という主張が声高に言われだしたのはいつ頃からのことでしょうか。
 私がこういう意見をはじめて目にしたのは確か2001年後半頃のことだったと思うのですが、それがどのサイトであったのかわからず、最古の主張を特定するには至りませんでした。
(多分このサイトのどこかで、内容的にはここ(Internet Archiveによると、2003年には既に存在)かここ(2002年)の11月21日くらいではないかと思うのですが、はっきりしません)

 この主張に関しては以下のサイトが纏まっています。
 リンクとマナー(2002/5/11公開、2003/2/5最終更新)
 色々なウェブサイトを見ていると、しばしば(私の場合は1〜2%程の割合?で)『無断リンク禁止/直リンク禁止』といった但し書きを見かけます。
 実際の所こういった但し書きには何ら強制力は無く、お願い以上のものではありえないことはよく知られていますが、それでもこういった、ある種のリンクが良くない行為であるかのような主張は後を絶ちません。
 文面から、2002年5月よりも前から「無断リンク禁止という但し書きに強制力はない」という理解が「よく知られた」ものになっていたことがわかります。
 2003年にはこのようなサイトができています。
「無断リンク禁止/直リンク禁止」命令に関する想定問答集 (公開:2003年1月17日 最終更新:2005年1月3日)
多くのウェブサイトを見ていると、「無断リンク禁止/直リンク禁止」を謳い、そのような行為に対して過激な攻撃(罵倒や相手サイトのキャプチャ晒しなど)を行っているサイトがしばしば見受けられます。
 この段階になると、「無断リンク禁止」という文言はともすればトラブルを招きかねない、非常識な主張として受け止められていたようです。

 これらサイトの記述を読むに、
・Webで公開されている情報は自由にリンクされてよいはず、という意見は1996年以前からある
・だけれどその原則を踏まえた上で、2002年頃まではトラブルを避けるため、相手との交流のため、エチケットとして、などの理由でリンクを張る際はサイトの持ち主に許可を得たほうがよい、という意見をもつひとが一定数いた
・そういうマナーが普及した結果、リンクを張られる側には「リンクフリー」か「無断リンク禁止」のどちらかを選択する権利が発生すると考えるひとが出てくる
・「無断リンク禁止」の主張をするサイトに対しあらためて、Webで公開されている情報は自由にリンクされてよいはずという原則を説くひとが現れる
・2003年の時点ではその原則のほうを支持するひとが増え、そういうひとが「無断リンク禁止」は馬鹿げた主張であるとみなし、それを掲げるサイトを非難するという事例が発生している
 
 という流れが読み取れます。
 以下は推測も含みます。

・それでもその原則を踏まえた上で「リンクを張る際はサイトの持ち主に許可を得るのが親切」という考え方がマナーとして宣伝されていたことも事実なので、「無断リンク禁止」を禁止されるのが納得行かない、よくわからないひともいる
・「公開している情報は自由にリンクしてよい」という主張には根拠があり、「リンクを張る際はサイトの持ち主に許可を〜」というのはあくまで交流のため、面倒ごとを避けるためにできた慣例、不文律なので、根拠を示されると弱い
・啓蒙精神に溢れているひと、あるいは勝てる喧嘩が大好きというひとにとって「無断リンク禁止」という主張はあまりに魅力的なので「そんな馬鹿げた主張をするべきではないですよ!」と押しかけることになる
いじめみたいになる

 という状況が生まれたのかなあ、と。

 今回の教訓は以下の通りです。
・「無断リンク禁止」という言葉は、2006年現在ではリンクを禁止する有効な手段にはなりえず、むしろ啓蒙精神に溢れたひとを惹き付けてしまうとても危険な呪文として作用しかねないので、使用を控えるのが賢い処世術です
・数年の間にネットのマナー、常識といわれるものはころころと変化しているので、揉め事に巻き込まれないためには常に自分の常識を疑い、ネット上で多数派の意見はどういうものか、というのを見極めて、それにおもねっていくことが大切です
・面倒ですね

 平和な人生を望むなら、適度に周りに合わせることも必要です。
 それでも多数派でいかにも正しそうな意見を見たとき、その正しさを疑うことは大切です。

 自分の正しさを信じて疑わないひとが、いちばん悪いことをするのです。
posted by にくす at 01:40| Comment(2) | TrackBack(1) | Webでみつけたもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
っ、疲れた(^^;
チューブの交換とお掃除をしてロードレーサーの試運転。
わずか6〜7km走っただけで、息は上がり、足は脱力状態。
ヘロヘロになって試乗から帰ってきました〜。
歳は取りたくないものでございます(うーん中年の悲哀)。

さて、本題。
無断リンクについて、私的にはリンク先のお話が参考になりました。
http://www.tokyo-nazo.net/tester/kako/link.html

初めてInternetに触れたのは、今から10年以上前になりますが、
Webがこんなに混沌とした世界になるとは思ってもみませんでした。
当時はもっと明るい未来を思い描いていたように思います…。

ところで。
にくすさんにこっそり連絡したいのですが、
メールアドレスなど公開されていらっしゃらないようなので、
もし気が向きましたら、フォームからメール頂けるとうれしいです。
(気乗りしなかったらスルーして下さい、大した用事じゃないデス)
では〜。
Posted by サラ、マニアッス00 at 2008年05月17日 21:33
 こっそり連絡の件、承りました。
 こっそりお送りさせていただきます。
Posted by にくす at 2008年06月05日 22:29
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