2008年12月14日

同級生の消息

 ふと思い立って、かつての同級生の名前を検索してみました。

 名字を入れるだけでGoogleの予測変換にフルネームが表示されました。
 はてなキーワードに名前が登録されていました。
 ネット上では、ちょっとした有名人になってしまっていました。

 検索結果を軽く巡るだけで、その子が卒業後どうしていたのかをある程度知ることができてしまいました。

 その子は、その業界では大手の組織に入り、有名な作品の美術に携わっておられました。
 それがあるとき自分のサイトで不用意な発言をしてしまい、匿名掲示板等で批判されることになりました。行きすぎた批判者によって一時はお住まいや勤務先を調べ回ったものまで掲示板に書き込まれる、いわゆる「晒し」にあっているような状態であったようです。
 今はサイトも閉鎖されていて、現在その子自身が自分の名前でネットに掲載しているものはありません。
 残っているのは第三者による、該当の発言とそれへの非難の記録だけです。

 その子がどんな子であったのか、よく覚えていません。
 そう親しくはありませんでした。
 その子も私のことを覚えていないと思います。

 ただ、その子の作品が好きでした。
 繊細な線を、丁寧な作業を、手の癖を覚えています。
 気負いも衒いもなくさらりときれいなものを描く様子に、天賦の才能というものはたしかに実在するのだと思い知らされました。

 どのような軽率な発言があったとしても、私はその子の作品が好きでしたし、今でも好きです。

 ネット上の記録に、発言についての批判はあっても、それに乗じて作品に対する評価を不当に下げるようなものがなかったことに安心しました。
 作品の価値と創作者の人格を関連付けすることに意味はありません。
 もとより、表現者に人格などないのです。

 断片的に、ネット上に残っていたその子の作品を見ました。
 相変わらずよいものを作っておられました。
 ひとに見られるに足る、愛されるに足るものたちだと思えました。

 顔も性格も覚えていません。
 興味がなかったのかもしれません。

 それでも作品を覚えています。

 きっともう会うこともない子です。
 その子がネット上に名前を上げることも、もうないかもしれません。
 だとしても。

 どこかで描き続けていて欲しいと思います。
 描いている限りは、どこかで繋がっているのだと思えます。
 それは勝手な思い込みかもしれませんが、ただの感傷なのかもしれませんが。

 描き続けていて欲しいと思います。
 あなたの描くものが、好きでした。
posted by にくす at 15:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。